Introduction to Global Communication
2015年度から、1回のみですが、講義を担当しています。
「日本語から見たグローバル・コミュニケーション」というタイトルで講義をします。
2015年度は2015年6月15日に行いました。講義のテーマは2つ
日本語は学習する価値があるか?
海外で日本語を外国語として学ぶ人々は年々増加しています。国際交流基金の調査によると、その学習目的は、主に日本や日本語に対する興味がメインで、留学・就職のために日本語を勉強する人は、やや低め。では、日本への留学はどうかというと、日本学生支援機構の調査によると、日本語教育機関(日本語学校)を中心に留学生の全体数はぐんぐん伸びていますが、一方で、ここ数年、学部・短大・高専そして大学院レベルの留学生が伸び悩んでいることがわかりました。
ここから、日本語を勉強して、自分の勉強や研究、仕事等に生かそうという外国人が減っているのではないかという疑問が出てきます。
では、外国人に(趣味や興味を超えて)本気で勉強してもらえるような日本語にするためには、どうすればよいのか。これは、受講生にレポートでじっくり、考えてもらうことになります。
「日本語」で外国人をおもてなし
2015年に入り、外国人観光客数が急激な伸びを示しています。2月の外国人観光客数は前年同月比約1.5倍(日本政府観光局)。
一方で、外国人観光客への対応で困ったことも。しかし、その多くは相手の言語を使うことによって解決できることのようです。外国語で対応する工夫が求められそうです。
では、外国語でなんとか対応できれば、観光客に満足してもらえるでしょうか? 日本の魅力をさらに発見しようと、日本語を勉強して再来日する「リピーター外国人」は、今後、ますます増えるでしょう。彼らに理解しやすい日本語で接すれば、日本語以外の言語では手に入れられない情報や体験を得ることができ、新たな人間関係も築くことができるのではないかと思います。「日本語でおもてなし」というわけです。これで彼らの心をがっちりつかむことができるかもしれません。
理解しやすい日本語=「やさしい日本語」のコンセプトは、1995年の阪神大震災をきっかけに、現在では、減災や住民サービス、ニュース配信など、日本語を母語としない人々を対象に、様々な場面で活用されてきています。
ところが、日本語を母語とする人にとって最も大きな問題は「やさしい日本語」で書いたり話したりするのが意外と難しい、ということ。語彙をコントロールするだけではなく、要点をしぼるなど、様々な配慮が必要です。こういったことを学ぶきっかけとして、大学や住んでいる地域の、国際交流や日本語を教えるボランティアに参加することもよいかもしれません。
講義の後で…
受講生からいただいた感想のごく一部を紹介します。
授業の後半の「やさしい日本語」について、多くのコメントをいただきました。
多くは、必要だ、使ってみたい、といったコメントです。
-
命にかかわる問題であれば、すべての人が理解しないといけないから「やさしい日本語」は必要だと思う。
-
アルバイト先でも外国人に「やさしい日本語」で接客してみたい。
-
外国人がもっと日本に来るようにするためには、外国語が通じるようにすることが一番の方法だと思っていたが、日本語をやさしくするというのも一つの手だなと思った。
その中で、ちょっと立ち止まって考えたくなるようなコメントもいただきました。今後、「やさしい日本語」が普及する上で問題になりそうなポイントかもしれません。
-
今まで「やさしい日本語」と子どもに使う日本語を混同していた。
-
難しい日本語をあえて使うことが人の教養や知性を表す基準だと思っていたが、相手や状況に合わせて言い回しを考えることも大切だと思った。
-
やさしすぎると相手の気分を下げてしまうという難しいところもあると思う。
-
「やさしい日本語」だけだと、言葉が簡単なのでいろんな解釈が生まれ問題も生じるかもしれないので、コミュニケーション能力の大切さも感じた。
その他
-
この講義の間「やさしい日本語」でお話をしてくださったのではないかと思う。池上彰さんもそこに注意を払っているそうだ。
→池上彰さんと同列に扱っていただき光栄です(笑)
-
日本に留学に来て、市役所で健康保険の手続きなどをしたとき、説明書などが読みづらい、理解しにくかった記憶がある。
→留学生からは、「やさしい日本語」を広めてほしいというコメントを多くいただきました。
前半のテーマに関するコメントもいただきました。日本語の価値を上げるのは、前途多難、かもしれません……。
-
外国の人から難しいと思われやすいのは、日本語が広まらない原因だな、と改めて思った。
-
英語や外国語のみではなく、自身の武器である日本語とどう関わるかということをしっかり考えて学んでいきたい。
-
日本語での勉強/研究/仕事の意味がなくなってきているという考えは正しいと思うが、その分、文化が日本語を支えているのだと、文化の大切さを実感した。
-
日本語を本気で学ぶ人を増やすのは難しいのではないかと、私は思う。
-
この講義を受けるまでは、「国際化」というトピックを考えるとき、他の言語を学ぶことしか考えていなかった。